２００８年夏　プライスレス！

8月最後の土曜日、近所の公園では毎年恒例の『城岳地域盆踊りの夕べ』が行われた。今年で31回目の開催となるという、なかなか歴史のある祭りのようだ。数年前からは娘たちがお世話になっている樋川保育所も参加するようになった。
年長にあたる下の娘は気合が入っていた。何故なら、やぐらの上で踊るのは年長さんだけの特権だからだ。ところが気合いが空回りして、前日には39度近い熱を出した。｢これで本番は無理か…｣と思ったが、当日は朝から病院に行き、薬も嫌がらずに飲んだ。浴衣に着替える頃には熱も下がり、顔も引き締まって、まるで大舞台に立つ女優さんのようだ。｢病は気から｣というが、まさに気力で熱をねじ伏せたという感じだった。
やぐらでの本番は滞りなく終わり、本人もたいそう満足げだった。ほっとしたのだろう、保育所から頂いたご褒美のお菓子をすごい勢いで平らげている。
腹ごしらえの済んだ娘は、仲の良い保育所の友達と一緒に公園内の出店を回っていたが、しばらくすると目を輝かせながら戻ってきた。
｢お父さん、チンギョすくい。自分もやりたい！｣
「わかった、わかった。金魚ね。今日は頑張ったからね。」とOKした。
金魚屋のオヤジに300円払うと、4本のポイを手渡された。初めての金魚すくいは、4歳の子にはやはり難しい。3本目までのポイはあっさりと破れた。ところが最後のポイを持った時、奇跡が起きた。私は一部始終を見ていたが、そのチンギョは、まさに自分からポイに乗ってきた。盆踊りの舞台に全身全霊を傾けた娘に、神が降りてきたとしか言いようのない光景であった。
カード会社のCMではないが、「金魚屋さんのポイ300円、夏の思い出プライスレス。」となった2008年の夏であった。
追伸：この後、父は｢金魚の水槽セット｣という予想外の出費が発生し、カードで支払うこととなった・・・トホホ。
なかえま通信’08/09月号より　　（担当：大城　章）